≪地元メディアの反応≫
日本製鉄株式会社は、米国の老舗鉄鋼大手U.S.スチール(United States Steel Corporation)を約149億ドル(約2.3兆円)で買収し、完全子会社化したと発表した。日本製鉄は2028年までに約110億ドルのインフラ投資を計画しており、新設工場を含む製造拠点の拡充も予定している。

買収の意向は2023年12月に公表されており、日本製鉄はU.S.スチールの社名および本社所在地(米ペンシルベニア州ピッツバーグ市)の維持、ならびに既存の労働組合との契約を尊重する方針を示していた。
U.S.スチールは、老朽化した製造設備の再構築や、グローバル市場における競争力強化を目的として、本買収に合意した。特に、日本製鉄が有する先進的な製造技術や脱炭素化への取り組みは、米国が推進する持続可能な製造業の実現に貢献すると期待されている。

一方、買収に対しては全米鉄鋼労働組合(United Steelworkers)をはじめ、米国内の関係者から懸念の声が上がり、2024年にはバイデン大統領および当時のトランプ候補も国家安全保障上の観点から反対の意向を示した。これを受け、2025年1月にはバイデン大統領が大統領令を発令し、買収計画は一時中断されたが、同年6月にトランプ大統領の最終承認を得て、買収は正式に成立した。なお、株主には1株あたり55ドルが支払われ、U.S.スチールは上場廃止となる。
今後、米政府は取締役会に独立取締役1名を指名する権利を持ち、本社移転や社名変更など、一部の経営戦略上の重要事項に対して拒否権を行使できる。また、取締役の過半数は引き続き米国市民が務めることとなる。

本買収により、両社の粗鋼生産量は世界第3位の規模に達する見込みであり、日本企業による米国鉄鋼業界への本格的な進出として大きな注目を集めている。
(Trans by Hinton & Adam)