≪地元メディアの反応≫
ジャカルタ市の数百万の通勤者は、世界で最も激しい交通混雑に苦しめられている。今年エンジンオイル・ブランドの「Castrol」が発表した調査結果によると、ジャカルタ市の交通渋滞は世界78都市中第1位。ジャカルタ市のドライバーの平均走行速度は時速8.3キロで、ニューヨークのドライバーの半分以下の速度だ。

事態をさらに悪化させているのは、ジャカルタで毎日少なくとも1,000台の自動車・バイクが増え続けていることだ。現在建設中で2018年に開業予定の地下鉄「Jakarta Mass Rapid Transit(JMRT:ジャカルタ都市高速鉄道)」が交通渋滞解消の切り札として待望されている。
ジャカルタMRTは、ジャカルタ首都特別州が設立した「PT MRT Jakarta」社が建設運営するインドネシア初の地下鉄を含む都市高速鉄道システム。第一期工事で2018年に開通予定なのは、ジャカルタ市南部郊外Lebak Bulusからジャカルタ市中心部Bundaran HIまでの約15.7Kmを結ぶJMRT南北線だ。
総工費30億米ドルのジャカルタ都市高速鉄道の建設を請負うのは、日本の大手建設会社だ。日本企業が2013年6月に受注したのは第一期工事の6区間のうち地下部分を含む3工区だったが、10月になって発表が遅れていた残る地上3工区もすべて日系企業体が受注することが決まった。
「Shimizu Corporation(清水建設)」をリーダーに「Obayashi Corporation(大林組)」と国営建設会社「Wijaya Karya(ウィジャヤ・カルヤ)」、地元建設会社「Jaya Konstruksi(ジャヤ・コンストラクシ)」が参加する共同企業体が落札した2工区は全長3.89kmで、地下鉄の4駅舎と2.6kmのシールドトンネル2本(上下線)の建設が含まれ、受注額は計約170億円。
「Sumitomo Mitsui Construction Co Ltd(三井住友建設)」をリーダーに国営建設会社「Hutama Karya(フタマカリヤ)」が参加する共同企業体が受注した1工区は全長約2kmで、地下鉄の2駅舎と1.4kmのシールド2本の建設が含まれ、受注額は計約156億円。工期はいずれも2013年6月から2018年3月までの57ヶ月となっている。
2013年10月に残る地上部を受注したのは大林組をリーダーに清水建設、ジャヤ・コンストラクシ社を加えた共同企業体が1工区、「Tokyu Construction(東急建設)」をリーダーにウィジャヤ・カルヤ社を加えた共同企業体が2工区。両者で全長8.7Km、4地上駅舎と3高架駅、脚高最高12.5mの高架橋工事、メンテナンス工場、車両基地、変電所建屋工事などが含まれ、受注総額は約325億円、工期は2018年6月までだ。
しかし昨年10月ジョコウィ新知事が就任してから、事業費のうち日本の円借款が占める割合の見直しが行われたほか、落札業者の発表が遅れたり、理由も不明なまま建設費の再交渉問題が浮上するなど、工事を巡る環境に混乱が続いており、2018年開通の予定が危ぶまれている。
2013年に工事を発注し計画が始動して以来、中央政府とジャカルタ首都特別州政府は交通渋滞問題の解決を急ぐと言明してきた。今月Ignasius Jonan交通相はJoko Widodo(ジョコ・ウィドド)大統領との会談後、「ジャカルタ地域の公共交通機関開発計画は遅れが許されないとの大統領指示」を明言した。
構想から20余年、今年になってやっと着工に漕ぎ着けたジャカルタ都市高速鉄道。期待が大きい分、工事の遅れには厳しい批判が待っている。このほど示されたウィドド大統領の厳命によって、全ての工区で日本企業に対するプレッシャーがさらに高まることになった。
(SOURCE:Reuters,Jakarta「trans by shimamori 」)